洛タイ投書箱



暴れるプチヒトラー菌
2016年 8月 4日


◆…障がい者を社会から抹殺することが、「美しい日本」を実現するために必要なことーそう確信している男が、障がい者19人を殺害した。国はこの人物を「精神障がい者」扱いして、措置入院制度の再検討を始めたが、問題はそこにあるのだろうか。絶対に違う。犯行を前に、犯人が大島理森衆院議長に宛てた手紙に歴然としている。そこには「障がい者は不幸を作ることしかできない」存在であり、「障がい者を抹殺」することが「愛する日本国、全人類のため」であるとの考えが理路整然と記されている。そしてそこに書かれた「作戦」通りに実行している。
◆…さらに、犯行後の自らの身の処し方について国からの見返りとして「2年間の監禁後」は、自身を精神障がい者扱いすることで「心神喪失による無罪」判決を受け、「自由な人生」を送れるよう、「新しい名前、本籍」と「美容整形」で得た新しい顔により社会に復帰したい、と要望している。その上で、国からの5億円の支援を求めている。その内容の一部始終から、極めて冷静沈着、冷酷無比、自己中心ながら全て計算し尽した確信的犯行であることは明々白々。
◆…今回の事件に底知れぬ戦慄を覚えるのは、単なる「特異な人物の異様な犯行」とは思えないからだ。「ヒトラー思想が2週間前に降りてきた」と犯人が元勤務先の施設職員に話したように、人間の本源に関わるゆがんだ「優性思想」にもとずく思想犯であり、国家主義が蔓延する現代という土壌を根に咲いたあだ花の不気味さが漂う。「優性思想」は、能力的に劣った民族や、遺伝的障がいを持つ者は子孫を残してはいけない、という考えだ。人の命が、何ものにも代えがたい尊極の存在であるとの考えが完全に欠落している。
◆…ナチス・ヒトラーは、世界一優秀な民族である「ドイツ民族」の優越性を保持するため、「ユダヤ人を断固除去する」として600万人以上を虐殺した。しかし真っ先に抹殺したのは、自国の「障がい者」20万人だった。1933年1月に政権奪取したナチスは、その年の7月に「断種法」を制定した。遺伝性疾患と診断されると強制的に不妊手術が行われるもので、その趣旨は「本人、家族が不幸」であり、「巨額の税金が使われる」ことを防止するため、だとしている。この法律に基づき1939年10月「T4計画」と称し、ナチス党員による“障がい者狩り”で強制収容所に集められた障がい者は、様々な人体実験を受けながら、ガス室で命を奪われた。
◆…「断種法」は、ドイツの専売特許ではない。日本でも、「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に、障がい者等の同意なく不妊手術を強制的に行うことができる「優性保護法」が、1948年(昭和23年)に制定され、1996年(平成8年)まで施行されてきた。この間に行われた不妊手術は1万6500件に及ぶという。ナチスとの違いは、障がい者をガス室送りにしなかっただけだ。今回の事件を起こした犯人の思想も行為も、ナチスそのものだが、背景の闇は深く暗い。
◆…ロシア、中国は言うに及ばず、日本を筆頭にアメリカ、ヨーロッパでも国家主義が幅をきかせている。背景には、社会正義をあざ笑い、強きにへつらい、自分より弱い者を叩くことで不満のはけ口とし、わずかばかりの利益を奪い合うという浅ましき人々が多数派を占めつつある悲しき現実がある。そんな心のすき間にはびこるプチヒトラー菌が、世界中で猛威をふるっている。我ら団塊世代はいい。滅多に戦争にかり出されることはない。子や孫の無駄死にだけは何としても避けたいと思うのだが、現実は戦争屋どもがどんどんそっちに向かって走り、「お代官任せ」のお人好しは又もや騙され、無間地獄に引きずり込まれようとしている。(藤本博・城陽市)

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