洛タイ投書箱



中・韓蔑視報道は誰のため
2015年 8月 7日


◆…日本人320万人、アジア人3千万人が誰かに殺された太平洋戦争から70年、戦争の姿は様変わりした。「オーバー・キル」―地球上には現在、人類をくり返し破滅できる1万5700基もの核弾頭が存在する(米科学者連盟)。この内、米ロの1800基は、大統領の決断で数分後に一斉発射できる臨戦態勢にあるという。米ソ冷戦時代の1979年11月9日未明、「ソ連の潜水艦が全米に220発の核ミサイルを発射した」との情報をアメリカがキャッチ、当時のカーター大統領が核のボタンを押す寸前、誤報だったことが分かる事件が発生している。この時、ボタンが押されていたら、今私達は存在していない。
◆…西欧列強による、16世紀から始まり20世紀まで続いた、アジア、アフリカ、南米各国の植民地化は、資源確保、利権収奪、低廉労役などで莫大な利益をもたらした。鎖国で出遅れた日本は、明治維新を経て日清、日露、第一次世界大戦の勝利を勢いに中国に進出、朝鮮半島を植民地化した。しかし、独立への機運、植民地主義の終焉など国家間の関係は平等互恵の方向に動き出していた。日本は、時代錯誤の道を進み、国際的に孤立化し自滅した。第二次世界大戦後70年間の戦争は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東戦争、イラク戦争とどの戦争でも、戦勝国は領土も資源も得ていない。むしろどの国も尊い人命を犠牲にして、経済的損失、国民の誇りを喪失した。愚かさに気付いたバラク・オバマ米大統領は、イラクから地上軍を撤退させた。
◆…戦後唯一、世界中で戦争をしまくってきた殺人国家アメリカが、ようやく人間性を取り戻したと思ったら、何と今度は日本が「プチ殺人国家見習い」に名乗りを上げた。世界に冠たる平和憲法の下、国家の名の下で殺人を犯さず、世界で唯一の被爆国の日本は、世界平和への潮流をリードしていかねばならない立場に居る、にもかかわらず又逆行しようとしている。まるで戦前のように。
◆…愚かにも安倍晋三総理は、曲がりなりにも保たれてきた「平和国家」の看板をかなぐり捨て、時の権力者が「日本の存立危機事態だ」と“総合的に判断”すればいつでも、どこでも、どの国とも戦争が出来る「戦争法案」を、「平和のためだ」とごり押しで成立させようとしている。就任以来、お友達をNHKや日銀に送り込み、マスコミ各社に圧力をかけ続け、権力者に不都合な情報を隠し国家への批判を封じる「秘密保護法案」を成立させ、大企業を喜こばせる「武器禁輸」も堂々と解禁、戦争遂行に邪魔な「文民統制」のタガを外すなど外堀を埋め、今回の「戦争法案」が平和憲法安楽死のトドメとなる。安倍チルドレンの若手国会議員や右翼系作家は、気に入らない新聞はつぶしてしまえ、と大気炎。さらに側近中の側近、磯崎陽輔首相補佐官は「安保法制に合憲の是非は不要」(趣旨)と発言し、まるで3歳児が真剣を振り回すかのようなおぼっちゃま内閣の危険性をさらけ出した。総じて世論無視のその姿は、まるで第一次大戦後、国際連盟を脱退して、満州国建国など中国侵略まっしぐらの戦前軍部の横暴さと重なる。
◆…共同通信社が今年5〜6月に行った全国世論調査で、「日本が将来戦争に巻き込まれる可能性があると思うか」との問いに60%の人が、「ある」(大いに12%、ある程度48%)と回答している。一方で「余りない」も33%あり、安倍総理の言葉をまともに信じている人が3人に1人は居る。気になるのは歴史認識だ。太平洋戦争について「侵略戦争だった」との認識を示した人は49%しかいない。「自衛戦争だった」と、昭和天皇による「開戦詔勅」(存立危機に至り、自存・自衛のために戦う)をそのまま信じているかのような人が9%居ることには驚かされるが、「どちらとも言えない」とあいまいな認識の人が41%も居ることが信じられない。他国に軍隊を送り、かいらい国家を建国し、刃向う国民を殺しまくる、死者の数およそ2千万人、これを侵略と言わずして何を侵略というのか。「西欧もやったのに、何で日本だけが責められるのか」そんな理屈は、侵略された国民に通用しない。ちなみに「侵略戦争だった」との認識を示した人は、21年前の1994年調査時は56%だったことから、7ポイント減ったことになる。
◆…この数値下落に貢献したのが、テレビを中心にした「中国・韓国見下し報道」だ。まぁここ何年来と、朝のワイドショーでは、両国民を小馬鹿にしたような映像、コメントが垂れ流しされてきた。中国の富裕層が、炊飯器など電化製品やカメラ、化粧品、医薬品などを大量に購入する姿を「爆買い」と称し、「爆買いは、マナーよりマネー」「春節爆買い狂騒曲」など揶揄する。「子供が立小便をした」「路上でスーツケースを広げた」など大騒ぎして、中国人観光客をあざ笑う。他にも「空港が混雑する」「転売して儲けている」「品不足で日本人が買えない」等々、負の面を一方的に強調する番組を流し続けてきた。
◆…ところが今年5月に財務省が発表した2014年度(2014年4月〜2015年3月)国際収支の数値が流れを変えた。輸入と輸出の比率を示す「貿易収支」は6兆5708億円の赤字ながら、全体としては7兆8100億円と前年度比5・3倍の黒字額を記録した。国内需要が落ち込む中、円安を背景に大企業が海外からの配当や利子で稼いだ額が19兆1369億円、加えて旅行収支が55年ぶりの黒字を計上、その額は2099億円となった。6月に発表された「観光白書」(国土交通省観光庁)によれば、2014年(同年1月〜12月)の訪日外国人数は1300万人(前年比30%増)。この内中国人は83%増の241万人。数では、台湾(283万人)、韓国(276万人)に次いで3位ながら、その消費額は5583億円(前年比2倍)で、全消費額2兆278億円の4分の1を占め断トツ。テレビや週刊誌があざ笑っていた中国人の「爆買い」が、日本の経済にいかに貢献していたか、その実態が明らかにされるや、「見下し報道」はややトーンダウンした。さらに上海株が大幅下落すると、何と今度は「爆買いがなくなるのでは」と心配する報道が流れ出した。
◆…戦争は突然やって来ない。一定の条件が整わなければならない。@小児病的国家主義者の登場A利己的よいしょマスコミの存在B「お上」任せの無関心国民C仮想敵国への憎しみ、あざけり、恐怖心。戦後、AとBはずっと存在していた。@は安倍総理の登場で実現した。さて問題はC。Cの醸成には少し年月を要する。暴走総理の意向を酌んでテレビはこれまで、せっせとCの役割を果たしてきた。衆院での戦争法案強行採決後、急落した内閣支持率回復のカンフル剤として安倍軍団は、南シナ海における中国の海洋開発の写真を公開するなど、国民の恐怖心と不信感をあおったものの、所詮は数年前からの古いデータで、しかも日本が主張する日中中間線の中国側海域での開発行為。某テレビの解説者は、「資源は地下でつながっている」と中国を批判したが、それを言うなら「地球の資源は全てつながっている」のだから、殺し合って、資源を奪い合う愚かな争いを避ける知恵を模索すべきだ。いずれにしても、テレビで垂れ流される、中国、韓国を小馬鹿にした映像、コメントには、眉につばをつけて見た方がいい。それが言いたかった。(城陽市在住・藤本博)

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