ポリオ根絶ボランティア活動で垣間見た
最近のラオス事情
高橋内科医院院長 高橋 権也
■まえがき
  京都を中心とする国際ロータリー2650地区では毎年ポリオ根絶のボランティア活動をしています。今年はラオス北部の山岳地帯の少数民族を対象に実施しました。ラオスでの活動の第1回目は1998年でした。このコラムではポリオ根絶の現状を説明し、次に今回見聞きしたラオスの現状を18年前と比較して3回に分けて報告します。

第1回 ポリオ根絶活動は新しい局面を迎えています




ワクチンの投与を受けに集まった子供たち


ワクチン投与風景
 かつて猛威を振るったポリオ、日本では1960年、北海道の夕張市を中心に全国で5606名の子供が感染しました。当時の厚生大臣の超法規的な決断により、ソ連とカナダから経口の「生ワクチン」1300万人分が輸入され、1961年、5歳以下の全国の子供たちに緊急かつ集団的に投与されました。その結果、日本のポリオ発生数は劇的に減少し、1980年にはほぼ根絶しました。
 しかしその頃、世界ではポリオは125か国で35万人の患者が発生していました。1988年、WHOは「世界ポリオ根絶推進活動」を発足させ、2000年には根絶させる宣言を発表しました。
 民間のポリオ根絶活動は、すでに1985年から国際ロータリーが2005年の根絶を目指して活動をしていました。2009年より、マイクロソフトのゲイツ財団がポリオのために多額の資金を提供しています。
 日本が属するWHO西太平洋地域(37か国)では2000年に京都で「ポリオ根絶宣言」を出しました。世界的にはポリオはいまだ根絶されていませんが、確実に減っています。ポリオ患者数は昨年パキスタンとアフガニスタンの2ヵ国で、合計74人でした。今年はかつて多発していたアフリカのナイジェリアが再び発生国になり、11月現在3ヵ国で33名です。
 ラオスは以前はポリオが多発した国です。1988年の政府資料によりますと、ポリオ後遺症による患者数は2万3165名と報告されています。これは人口20倍以上の日本より多い数でした。しかし1996年に21名のポリオが発生した後は根絶しました。1998年、私がラオスでワクチン投与のボランティア活動したとき、ラオス政府は70%程度の接種率と説明していました。「最も接種率が良い」と政府が表彰した山岳地域の保健所長さんに現地でお会いする機会があり、直接お聞きしましたところ、政府発表よりだいぶ低い接種率でした。その後のラオスでのワクチン接種率は40%程度に下がりましたが、ポリオ患者は発生していませんでした。
 ところがここにきて大きな問題が発生しました。以前からある困った現象なのですが、途上国で投与されているワクチンは、弱毒化されているとはいえ生きたウイルスです。100万〜200万回に1回、投与された子供たちの腸管内で遺伝子変異が起こり病原性をもってしまいます。その時、周囲にワクチンを投与されていない子供がいますと感染してしまいます。さらにまたその周囲の子供たちに流行する危険があります。ラオスでは昨年から今年にかけて、このようなワクチン由来のポリオが11名発生しました。びっくりしたラオス政府は「非常事態宣言」を出しました。そして15歳以下の子供たち240万人の投与計画を立て実行に移しています。その結果、ワクチン由来のポリオは今年の1月11日が最後の患者さんで3人に抑えられました。
 私たちはワクチン投与でビエンチャンから車で5時間、ルアンパバーンから車で3時間の山岳地域へ行きました。今年ポリオが発生した地域です。ラオスの地方政府は、どこからこんなに集まったのかとびっくりするほどの子供たちを集めました。いつもは静かな村にとって大イベントだったと思います。合計で870名の子供たちにワクチンを投与することができました。
 すでに根絶した先進国では、ワクチン由来のポリオを防ぐため、死菌ワクチンを注射で投与しています。日本でも2012年より実施しています。近い将来途上国でも採用されると思いますが、多額の費用をどうやって捻出するかが大きな課題です。(つづく)



目 次 NEXT>>

copyright©洛 南タイムス社
京都府宇治市宇治壱番26
TEL 0774-22-4109 FAX 0774-20-1417

※このサイトに掲載する記事や写真、その他のデータの著作権は、洛南タイムス社
またはその情報提供者に属します。無断転載を禁止します。